ととらのお店番日記
都会の真ん中の小さな酒屋さんの飼い猫ととらのお店番日記

03 November

くくろさんのこと。

8年前、ととらが外に出てしまったので、大通りに面しているシャッターを猫が通れるだけ開けていた7月1日の朝、黒いものが目の端をすっと通った気がした。7月2日、地下室の棚に物体がいるのを見つけた。薄汚れた痩せこけてあちこちがはげた、それでいて革の立派な首輪をしていた黒い猫だった。ずっと棚に奥に隠れて出てこないので、地下室の階段を上がったところにカリカリを置いておくとソーッと上がってきては食べてまた籠城を繰り返していた。食いしん坊なようで日に何回も上がってきてご飯を食べているうちに、ご飯のそばにいることが多くなってきたので、声をかけてみると、ちょっと立ち止まったりしていた。そこからは案外早くて、すぐに地下にゲージを作ってその中に誘導してみるとあっさり入って、そこに居を構えることにしたらしく、だんだん馴染んできた。でもゲージの中に入れてわかったことはカリカリは食べてもすぐ戻すし、猫砂のトイレで用をたすことがなかった。これは躾が出来ていないタチの悪い猫かな、と困ったのだが、ふと、新聞の上でばかりするので、トイレシートをひいてみるとそこの上できちんとして、さらに終わったあと四つ折りに丁寧にたたむことがわかった。どうも歯がないようでカリカリをウエットの猫缶に切り替えるととてもよく食べるようになった。それでも吐き癖は随分と長い間続いた。



黒猫がいなくなったところはないかとあちこちで聞いたけれどそういう話はなかったので、父がととらにちなんで黒いからくくろという名にしよう、と言ってくれて晴れてうちのコになってからはお店と地下のゲージを行き来して過ごすようになった。大人しいコで一日中じっとしていたけれど、やっぱり食いしん坊で一日に160グラムの猫缶を5個ぐらい食べた。でも食べては戻しを繰り返していたので、きっと食べられない時期が長くて食べれる時に食べようとしているのだろう、と想像していた。想像といえば、ペットシートでしか用を足さないのはきっと、どこかの一人暮らしのおばあちゃんがこのコ飼っていて重い猫砂が持てないのでシートにしていたのだけど、そのおばあちゃんが亡くなってこのコは外に出て長い間さまよっていたのだろうということになっていた。



くくろさんがおとなくないというのはそれからしばらくしてわかった。てっちゃんを保護した時に大げんかをして絶対に寄せ付けず、外に何度もほり出した。喧嘩は必ず勝ったし、年末にゴールデンレトリバーがうちに来た時にはかかっていこうとしたので慌てて止めた。きっと野良時代に負けん気が強くてそのあたりの猫を寄せ付けずに生きてきたのだろう。
てっちゃんといつの間にか折り合いをつけて仲良く一緒に寝るようになってきてしばらくすると、ようやく熟睡するようになったのか寝顔がみられるようになってきた。



今年に入ってしばしば体調を崩すようになってきた。一月も二月も病院に駆け込み、もうダメかも、と思ってけれど、それでもなんとか持ち直し、七月に片目が見えなくなり、九月の時は立てなくなって、本当にもうダメと覚悟したけれど、それでも復活して、ソファーや、お店の椅子にぴょんぴょん飛び乗れて、以前にも増して元気になったので、もう少し一緒に居られるかな、と思っていた。ハロウィンのコスプレも仕方ないな、という感じで付き合ってくれて、その日もお店が終わると、お腹が減った〜、というので猫缶をあげるとペロリと食べてしまった。10時過ぎにまたお腹が減った〜というのでもう一缶あげるとそれもほぼ完食していつも自分の寝ているソファーの上に飛び乗ってベットで丁寧に毛づくろいをして寝てしまった。11時に2声、ないた。慌てて飛んでいくと、ベットから外に出ていたので慌てて抱き上げると顔を見てそのまま息を引き取った。あまりの突然の出来事で何が起こったか分からず母と二人で一時間ぐらい帰ってくるのを願いさすり続けた。が、戻ってくることはなかった。本当にあっという間に虹の橋を渡って行ってしまった。



今から思うと九月の瀕死の時にくくろさんは猫神様と契約を交わしたのかもしれない。今自分がいなくなるとみんなが悲しむのであとひと月だけ時間をください。最後に元気な姿をもう一度見せてあげたいのです、と。食いしん坊のくくろさんらしく、お腹いっぱいで旅立ち、本当に猫神様が風のように連れて行ったようでした。何もかも賢くて可愛くて愛おしいそして謎の多い唯一無二のくくろさんは今もここに気配を残しています。ずっとそばにいますよ、と。





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11:18:45 - toki - 6 comments -